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病院で

旧姓使用者の場合、健康保険証は勤め先によって戸籍姓に変えられてしまうのが普通です。当事者が拒んでも、人事総務担当者は、法律で「改姓は速やかに届け出よ、そうしなければ罰則」と定められているのに従うまでなので、非難はしにくいです。

ただでさえ具合が悪くて病院に行くのに、そこで望まない戸籍姓で呼ばれては、よけい気がめいってしまいます。

ただ、個人の医院では、事情を話して「百瀬」で呼んでもらうようお願いし、受け入れてもらえました。

出産は松本に里帰りすることにしました。小学生の頃に2回、中学生で1回、喘息の発作で入院した国立病院に決めました。

そこで、産科の看護師長さんと事前面談をしました。

「入院中は本来の姓で扱ってください」
「こちらは間違いを起こすわけにはいきませんので、保険証の名前で」
「では、戸籍姓をカッコに入れて、百瀬と呼んでください」
「カッコに入れるのは旧姓の方です」

という攻防戦を繰り広げました。

いざ入院の際は、戸籍姓で呼ばれたらいちいち訂正し、粘り強く1週間を過ごしました。

後で聞いたのですが、病院で意識を失いかけて危険な状態になった、やはり旧姓使用の知人が、使っていない戸籍姓で医療者から何度も呼びかけられてもまったく反応できず、駆け付けた夫が下の名前で呼んでやっと返事をした、というエピソードがあります。

戸籍姓は、確かに国に登録されている「本当の名前」かもしれません。病院が健康保険証の名前一本で扱いたいのも理解できます。しかし、婚姻の時期によっては、改姓後の期間が短く、本人が慣れていないケースもあります。意識がもうろうとしているときに「自分の名前」と認識している姓で呼ばれないと、反対に生命の危機に直面することもあるのです。