BLOG ブログ

生涯最後の痴漢(後日談)

法科大学院で学んでいたこともあり、今回の痴漢をそのまま許す気はありませんでした。

まずは、2日後の月曜日、足を引きずりながら京王井の頭線渋谷駅の事務室を訪ねました。

「女性客が痴漢を現行犯逮捕したのに、何人もの駅員が身柄を確保せず遠巻きに歩いていたというのはどういう了見だ!逃げた痴漢を追いかけてけがをしたのをどうしてくれる!」

精いっぱいの抗議をしたところ、副駅長が出てきて謝罪しました。

次は検察に電話をし、加害者の住所等を聞き出そうとしました。ところが、
「まだ担当検事が決まらない」
「加害者の生年月日は?」
などととんちんかんな対応ばかり。相手の氏名ならまだしも、どこの被害者が、加害者の生年月日などメモして帰ると思っているのでしょうか?

三度目の電話でようやく、担当検事につながりました。
「加害者の住所や電話番号を教えてください」
「そういうのは普通、書面で申し込むもんじゃありませんか」
「書面の見本みたいなものはどこかに置いていますか」
「ありませんよ」

偉そうな物言いに腹が立ち、被害者に対していったいどういう態度なんだ、とどなりつけました。

それなりの書面を作ってFAXし、ようやく回答がきました。

相手が58歳ということなので、年頃の娘でもいてはいけないと、用心しながら電話をかけました。

妻と名乗る人が出ました。逮捕のことは知っていたので、本人のいそうな日時を聞き出し、また電話するからと告げて、簡単に切りました。

次の電話で本人につながり、渋谷で会うことにしました。

ちょうどその頃、夫がスキンヘッドにしていたので、サングラスをかけさせて連れて行きました。小学校4年生の息子にもいい経験になると思い、大学院の同級生男子をアルバイトで雇って、二人を近くの席に座らせました。


痴漢と初めてまともに対面します。夫が無言でボイスレコーダーのスイッチを入れます。


「何をしてここに来ているか、話してください」
すると、処分の書面のようなものを取り出し、
「電車の中で陰部を触ったため…」
などと棒読みしました。


「今までに痴漢は何回しましたか」
「初めてです」

これは、捕まったのがたまたま初めてである、と解釈すべきでしょう。

現行犯逮捕後に逃走を試み、その結果被害者がけがをし、悪質であると判断されたため、留置所に2泊したそうです。普通はその日のうちに帰れるのですが。さらに、東京都迷惑防止条例違反による罰金を30万円ほど支払ったということです。また、妻は実家に帰ってしまったそうです。

「はい、じゃあ、私からの請求書」
と、精神的慰謝料に交通事故のけが見合いの損害賠償や治療実費を加算した書面を渡しました。ちゃんと世間相場を調べましたので、そう法外な額ではないです。遅延損害金は不法行為のそのときから遅延利息を計算していいのですが、細かくなってめんどうなので、そこはオマケしました。

期限をその月の末日までとしたものの、支払われなかった場合のことをいろいろと想定していました。ところが、翌営業日にすぐに全額振り込まれていたので、たいへん驚きました。

実家の母に話すと、
「1分や2分で、高くついたおさわりだな」
と大笑いしていました。

この賠償金で、母、私、息子の親子三代で香港旅行をしました。ぱあっと遣ってしまうに限ります。