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警察署で哺乳瓶

1996年の冬、前年の10月に出産して育休なしで3か月で職場復帰したばかりでした。東急田園都市線池尻大橋駅近くの、赤ん坊だけを預かる「保育室」というところに息子を預けていました。

18時過ぎ、渋谷で乗り換える田園都市線はいつも混雑しています。この日、渋谷を出てすぐ、おしりを触られている気配を感じました。私のかっこうはというと、赤ん坊を入れる部分を閉じた状態の、茶色いママコートです。下は間違いなく、パンツルックです。

1駅しか乗らないのに、こんな服装なのに、痴漢をしてくることに腹を立て、腕をひねり上げながら振り返りました。

いい歳をしたじいさんでした。

「次で降りろ!」
と言い放ち、ぐいぐい引っ張って駅員さんと一緒に事務室に連れて行きました。

「赤ん坊を回収してきますから、こいつをしばらく預かってください」
と駅員さんに頼んで、保育室に駆け付けました。長丁場になることがわかっていたので、置いている哺乳瓶と粉ミルクを1回分もらい、保育士さんに応援されながら、駅に戻りました。

そして、迎えに来たパトカー2台で、三軒茶屋の世田谷警察署に向かいました。

生後4か月くらい?息子、初めてのパトカー体験です。

痴漢を突き出すのも三度目なので慣れたもので、こちらは着々と調書作成に協力します。何号車の何番ドア、というあたりもちゃんと伝えました。

そのうち授乳時間になったので、お湯をもらってミルクを溶かして息子に飲ませました。

たぶん、途中で夫の会社に電話をしたと思います。まだ携帯電話は普及していない時代ですね。

調書が仕上がった数時間後、例によって、パトカーで家まで送ってもらいました。

痴漢はどうするのか、と聞いたら、
「そんなもの、放り出します」
とのことでした。

このときはちょっと事後の対応が特別でした。後日、刑事さんが家にやってきて、報告をしてくれたのです。

「72歳、勤め先のある男で、痴漢で二度目の現行犯逮捕でした。でも、息子さんが迎えに来たり、本人もかなり反省を示していたりしたので、実刑はなしになりました」

逮捕が2回、といっても、それまでさんざん触ってきて、たまたま捕まったのが2回だけ、ということだと思うんですけどね。

人生で一度くらいは刑務所にはいってもらってもよかったかもしれません。