離婚でシアワセ
1997年春のことです。
上司があまりにも理不尽で、幼児を抱えて働くのに問題があったため、転職を決めました。
年度内に内定が出ていたのですが、人事システムを新人に引き継がねばならず、6月1日入社ということにしてもらいました。
その間に、連休を利用して海外旅行を計画したところ、パスポートが切れているのに気づきました。
さあたいへん!
新しいパスポートは戸籍姓でしか作れません。せっかく本来の姓で守ってきたのに、こんなところで失うわけにいきません。
「今度こそ離婚してくれ!」
と夫に迫りました。
嫡出子が生まれましたし、家も買いました。夫の社宅に入るための法律婚を続ける義理はもうありません。また、転職先で旧姓が使えるとも聞いていましたが、これまでの経験から、そこここで戸籍姓を出されてしまうであろうことが予測されるため、最初から堂々と百瀬でいきたい、と考えました。
とうとう夫も離婚に合意しました。離婚届に証人の署名をするのを嫌がる人もいるのですが、私の職場でちょうど残業していた年上女性2名に頼んで書いてもらいました。すぐには新戸籍ができないため「離婚届受理証明」という書類を添付してパスポートを更新したりと、二人で駆けずり回り、無事にソウルに旅行できました。
これを「ペーパー離婚」といいます。普通の結婚生活なのですが、書類上だけ離婚していることを指します。最初からの「事実婚」ができなかった場合、このスタイルをとることが多いです。
離婚届を出し、今後は一切夫姓で呼ばれることがなくなると思うと、本当にすがすがしい気分でした。
その頃の私を見ていた夫は、
「妻がこんなにウキウキするなら、もっと早く離婚すればよかった」
と、反省したそうです。
そして、今日まで23年間、我々は離婚しっぱなしで仲良く暮らしています。